光と影|ぬくもり2-27

 結局のところ、人の物欲には節度がなくて際限もない。対価を払って買い求める物は、対価に見合うだけの満足感をそれほど長くは与えてくれないのだ。さらに高い満足感を得るために、もっと高価な物や希少価値に優れた物が次々に欲しくなる。それでも、まだ満たされない。自分一人の物欲をとことん追い求めることは、ゴールとなる山頂のない登山を続けるようなものだった。それに引き換え、心はわずかな喜びでも満たすことができ…

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サンセット|ぬくもり2-26

 二人の未来を祝福するかのような、冬空を吹き飛ばした晴天のドライブ日和であった。手持ちの時間が無くなっている高田義信が、満を持して彼女をデートに誘ったのだ。今日を逃せば、プロポーズの機会を失くしてしまう。そのことは、瑞希自身も十分に承知しているはずだった。このドライブにOKの返事を貰った段階で、一戸建ての社宅を本社に申し出ておいた。ぎりぎりで、引っ越しに間に合わせることができる。後は、互いの気持…

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ラストメッセージ|ぬくもり2-25

 ここだけ時が止まっていた。一度切り、身の回りの物を取りに戻った日の、気もそぞろで衣服や貴重品を詰め込んだ状態のままだった。否、賞味期限の切れた冷蔵庫の中身や、ポストの中の郵便物は、俊哉が事故に遭ったと聞いて、取る物も取りあえず飛び出して行った時のままなのだ。結婚を期に彼が購入した高級マンションは、真帆が戻るまで、物音一つもなく、あの時に置き去りにされていた。彼女は、窓を開いて風を入れ、おもむろ…

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