バイク|ぬくもり3-16

 友則は、講義の時間より少し前に来て、山崎菊五郎と真剣に話し込んでいた。知世の話を聴くうち、車椅子の貴公子が、このかるがもの代表であることに思い至ったのだ。佐々木敦夫とは、高校まで一緒だった。親友と呼べるほど深くはないが、ほかの同級生たちとグループを組んで遊んでいたのである。否、部活に打ち込んでいた敦夫が付き合うことは少なくて、どちらかと言えば、勝手に数に入れていただけかもしれない。卒業後は音沙…

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鬼ヶ島|ぬくもり3-15

 二人は、白竜浜の南に位置する“恋人三が崎”を巡っていた。蛇ケ崎、竜ケ崎、茨岬からなる壮大なスケールの、三つの伝説の岬が連なっているのだ。醜い姿に変えられた娘が身を投じたと伝わる蛇ケ崎と、しだいに竜へと変げした四足の海蛇が身を寄せたと言う竜ケ崎は、荒々しい白波の砕ける断崖絶壁であった。しかし、夏前に一面がナニワイバラの白い花で埋め尽くされる茨岬だけは、両脇を囲む蛇ケ崎と竜ケ崎が防波堤の役割を果た…

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下心|ぬくもり3-14

 これが三度目だった。しかし、今夜は残業の後ではなかったのだ。偶然に偶然が重なって、スタッフ全員が、夕方には揃って帰宅していたのである。愛娘のために、誕生日のプレゼントを買いに行くという正美を、彼は、ごく自然に自分の車に乗せていた。買い物は、短い時間で終わっていた。その後の食事も、ファストフードで簡単に済ませたのだ。彼女が観たいと言っていた映画は、まさかに年下の男性との激しい恋に落ちる女性の物語…

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