感涙|ぬくもり3-21

 むくつけき男たちの、殺伐としたヨットハウスの一日が終わっていた。夜明かしで島の警戒にあたる数名以外は、ぎっしりと二段ベッドの並んだ地下のタコベヤで、全員が競うように大きな鼾をかいている。彼らのために用意されている娼婦たちも、かなりの酒量を呷って、それぞれの個室で深い眠りに就いていた。黒岩武雄は、三日月形に囲まれた砂浜の照明を落とさせて、独りでその浜の南の端にきたのだ。目の前には、漁火すらない漆…

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無知の知|ぬくもり3-20

 無知の知。全知全能なる神以外は、自らが無知であると知ることで、物事に対する探究心をいだくことができるという、あの哲学者ソクラテスの有名な考え方だ。哲学は、人間とは何か、をとことん追求する学問であった。残念ながら、人は、自らが知識に飢えていると自覚することができない。空腹であれば、所かまわずお腹が鳴る。それが、生命を維持するための本能の働きであるからだ。食べなければ、やがてはやせ衰えて死んでしま…

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むかしむかし|ぬくもり3-19

 ―むかしむかし、あるところに、ちいさなちいさなこびとさんのくにがありました。みんな、ひとのてのひらにのれるおおきさなのです。とってもゆたかなくにで、たべるものにはぜんぜんこまりませんでした。あまくておいしいフルーツや、えいようたっぷりのおやさいがとれるからです。くにじゅうのひとたちがなかよしで、いつもたすけあいながらたのしくくらしていました。でも、このくにには、みんなでまもらなければならない、…

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