摩利支天|ぬくもり3-23

 白竜駅で任意での同行を求められた田所万作は、千穂の前では、狐にでもつままれたような顔をしていた。しかし、二十年前の改築工事にまつわる事情聴取であると告げられた刹那に、彼は、くるべき時がきたことを内心で悟っていたのかもしれない。妻だけを帰りの電車に乗せたのだ。心配いらないと笑顔を見せる夫に、千穂は動じることなくうなずいていた。万作ほどの男と連れ添うということは、こういう事態も十分に想定されるのだ…

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