分身|ぬくもり3-38

 鬼ヶ島に呼び出されたのは、木村碧の取り調べに立ち会った年配の刑事であった。ずらりと組員が囲んだソファで、須藤真一が、乱れた姿態の麗奈を執拗に弄んでいた。すでに薬漬けにされ朦朧としている。それが山本茜の祖父であると、彼女はもう認識できなかった。 「茜は!」「茜は無事なのか!」 何年も前から、金で買われていた。警察内部の情報を漏洩させていたのだ。 「ああ。今のところな。」 「会わせろ!」「…

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送信|ぬくもり3-37

 障害者。身体障碍、知的障害、精神障害、発達障害など、日常生活を送る上で、心身のどこかに問題をかかえ、何らかの制限を受ける人々の総称である。制限とは、行動の制限、情報の制限、意思疎通の制限、選択肢の制限、そして、差別や偏見による隠れた障壁の制限のことだ。これに、障害者個々を取り巻く環境や周囲の思惑、法的な処遇までもが、実に多種多様で複雑に絡み合うのであった。殆ど同程度の障害でも、先天的な場合と後…

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検索|ぬくもり3-36

 柳生康介が彼を見付けたのは、ネットで続ける検索の偶然であった。本名は、八神譲二(ヤガミ ジョウジ)と言うらしい。世界的に有名な、栄えある賞にも輝いたフリーランスの報道カメラマンだったのだ。なぜ、こんな片田舎に潜んで、名前まで変えているのだろう。無論、好奇心に火を着けて、想像力を無性にかき立てる。もしかしたら、未知なる大事件を追っているのか。著名人や政治家のスキャンダルも十分にあり得る話だ…

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