突風|ぬくもり3-40

 目当ての渚にメールを送信した男たちは、茨岬の同じ場所に黒いワゴン車を停めて待ちかまえていた。車内に姉がいると見せ掛け、同様に薬を嗅がせて意識を奪う。そのまま陸路で連れ去るつもりでいるのだ。そろそろ洋上の取引が、須藤の手で大詰めを迎えているはずだった。鬼ヶ島も、想定通り、夥しい数の機動部隊に囲まれている。もう黒岩は、この世には存在していないだろう。須藤会とその一派の、我が世の春が訪れようとしてい…

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銃声|ぬくもり3-39

 美崎凪乃は、すぐにそこが海の上であると気付いた。目覚めたのが、豪華な造りの船室の中だったのだ。体の自由を奪われることなく、大きなベッドに寝かされていた。何が起きたのかは分からない。しかし、真っ先に頭に浮かぶのは、安否の不明な黒岩武雄のことであった。外から施錠がされている。今はただ、彼の無事を祈る以外にはなかった。 「あなたは!」 最初に現れたのは、まさかに山本茜であった。 「ここで逢えて…

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分身|ぬくもり3-38

 鬼ヶ島に呼び出されたのは、木村碧の取り調べに立ち会った年配の刑事であった。ずらりと組員が囲んだソファで、須藤真一が、乱れた姿態の麗奈を執拗に弄んでいた。すでに薬漬けにされ朦朧としている。それが山本茜の祖父であると、彼女はもう認識できなかった。 「茜は!」「茜は無事なのか!」 何年も前から、金で買われていた。警察内部の情報を漏洩させていたのだ。 「ああ。今のところな。」 「会わせろ!」「…

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