ドリブル|ぬくもり3-32

 後の後悔、先に立たずとは言い得て妙だ。正美は半ば自虐的に、今の自分をそう断じていた。いけないことだと思いつつも、彼のスマホを、こっそり覗き見してしまったのだ。小紅螺と言う女性とのメールその他が全く見当たらなかった。あまりに不自然ではないか。旅行の幹事を、二人で任されたと聞いている。今は頻繁にやり取りしているはずだった。自分にこうして見られることも、ある程度予測していたに違いない。互いが、まだ互…

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密告者|ぬくもり3-31

 夕食の弁当は、手付かずでコタツの上に置かれたままだった。初めて休みを取る凪乃は、慌てて洋服に着替えると、古い三面鏡の前に正座して入念な化粧を始めていた。渚から借りたイヤリングが。鏡の中の自分を見詰める彼女の心を華やがせたのである。ベッドの枕元で時を刻む目覚まし時計も、その鏡の一部に映っていた。もうすぐ迎えの時間なのだ。左右の反転した文字盤の針が、意地悪に逆回りして、時を贈らせているかのように感…

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視線|ぬくもり3-30

 小紅螺はさんざん悩んだ末に、友則との食事に出かけることに同意した。しかし、記念すべき初デートであるのに、やはり彼女の体力的な負担を事前に考慮しておかなければならない。自宅で家族がサポートしてくれる状態とは違って、彼がまだ病気について何も知らない以上は、高い緊張感などの精神的な負担まで考えておかなければならなかった。自然、予め制約を設けて、無難に過ごせる無理のないデートとなったのだ。送迎は、彼女…

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