失望|ぬくもり3-35

 人間の心とは、これほど短い間に、こんなにもさまざまに変化するものなのか。美玲は、彼と逢った瞬間に、忽ち気負いこんで、自分らしさが吹き飛んでしまうのを感じていた。初めて披露した挨拶の手話も、緊張で指先が震えていたために、思うようには動かせなかったのだ。その上、明信の手話通訳の男性が、なぜか彼自身ではないかと錯覚してしまい、もしかしたら本当は話すことができるのかと、あり得ない妄想までいだいて舞い上…

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御一行様|ぬくもり3-34

 何かに取り憑かれたような画伯の閃きと創作意慾に、ある決意を胸に秘めた渚が、片時も傍を離れず付きっ切りでアシストを続けていた。どうしても、自らの頭に浮かんだ白い竜の姿を描きたい。こちらも殆どボランティアで、沖むらの中広間(チュウヒロマ)の舞台前に下絵を広げていた。菊川由莉がこの白竜浜を訪れてからのわずかな時間に、見目麗しい美人若女将と妹は、彼女の目からも明らかに分かるほど大きな変貌を遂げていた。…

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変化|ぬくもり3-33

 ただでさえ厳めしい顔の森下が、今にも鉄拳制裁するのではないかと思わせる形相で、客間の一つに呼び出された彼女たちの顔を睨みつけている。事実、水谷茂と小川直之の二人は、板場の裏で強烈な一撃を見舞われて吹き飛んだのだ。山本茜は、ハンカチを握りしめて泣いていた。気の強い澤田麗奈は、むくれた表情で彼から目を逸らせている。仲居頭の初美は、落ち着かない様子で、若女将が現れるのを待っていた。 「ああ、女将さ…

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