視線|ぬくもり3-30

 小紅螺はさんざん悩んだ末に、友則との食事に出かけることに同意した。しかし、記念すべき初デートであるのに、やはり彼女の体力的な負担を事前に考慮しておかなければならない。自宅で家族がサポートしてくれる状態とは違って、彼がまだ病気について何も知らない以上は、高い緊張感などの精神的な負担まで考えておかなければならなかった。自然、予め制約を設けて、無難に過ごせる無理のないデートとなったのだ。送迎は、彼女…

続きを読む

複製|ぬくもり3-29

 たらふく食った年配の守衛は、朝が早いからと独りで先に帰っていった。年増の事務員だけが、島のカウンターで手酌の酒を飲んでいるのだ。あれから2時間近くが経過している。今頃は薬の効果が完全に切れているだろう。何も言ってこないということは、相応に因果を含めて、社長の海野が上手に扱っているはずだった。相手の女将も馬鹿ではないのだ。不本意とは言え、彼に抱かれたことが実は幸運かもしれないと気付くだろう。した…

続きを読む

罪と罰|ぬくもり3-28

 贅を尽した海乃夢庵は、白竜浜と恋人三が崎、そして鬼ヶ島も一望にできる高台の、誰もが認めるこの町で最高のロケーションに建てられていた。源泉かけながし、檜の野天風呂の付いた広い和室と、高級家具の配されたロイヤルスイートルーム、それに七種類の湯が楽しめる大浴場まで、海野正孝の嗜好に合わせて、さまざまな趣向が楽しめるよう工夫が施されている。仕事を終え、和服姿で現れた凪乃は、年増の事務員の判断で和室に通…

続きを読む